
倫理|日本思想
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大学入試センター試験の倫理の日本思想を解説付きで。重要事項の一覧も用意しています。
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センター過去問+解説
大学入学共通テストの問題も含みます
Level A
おもに用語や知識が問われる問題です。
神々とともにこの世を生き,隠しごとがなく純粋である,ような心のあり方を表す言葉として適当でないものを,次の①〜④のうちから一つ選べ。(2012)
- ① 赤心
- ② 明き心
- ③ 黒心
- ④ 清き心
古代の人々は「清き明き心」を重視した。赤心は教科書には出てきていないが、飾りのない純粋な心のことである。
同じく古代の精神として賀茂真淵が提唱した高く直(なお)き心は純粋なだけでなく力強さも含んでいる。
大陸から伝来した仏教や儒教に影響を受けた十七条憲法(憲法十七条)における「和」の教えについての記述として最も適当なものを, 次の①〜④のうちから一つ選べ。(2018追試験)
- ① 儒教の教えに則って,年長者の意見を疑うことなく尊重し,必ずそれに同調することで「和」を実現すべきである。
- ② 凡夫の身で議論を重ねることの無意味さを悟って,仏の教えにひたすら従うことで「和」を実現すべきである。
- ③ 儒教の教えに則って,他人と意見が対立した場合には,自分の意見を取り下げることで「和」を実現すべきである。
- ④ 凡夫であることを自覚し,自己の主張に間違いがあることを恐れつつ謙虚に議論することで「和」を実現すべきである。
選択肢の通りです。
次のア~ウは,仏教の布教に取り組んだ人物についての説明である。その正誤の組合せとして正しいものを,次の①~⑥のうちから一つ選べ。(2018)
ア 鑑真は,密教の教えに厳密な戒律を取り入れた真言律宗の立場から,各地を遍歴し,病人の救済や,道路や橋の修造を行った。
イ 空海は,唐で密教を学び,帰国後に真言宗を開くとともに,綜芸種智院を設立し,庶民教育にも努めた。
ウ 一遍は,念仏を唱えれば信不信にかかわらず往生できることを伝えるべく,各地を漂泊したことから,遊行上人と呼ばれた。
- ① ア 正 イ 正 ウ 誤
- ② ア 正 イ 誤 ウ 正
- ③ ア 正 イ 誤 ウ 誤
- ④ ア 誤 イ 正 ウ 正
- ⑤ ア 誤 イ 正 ウ 誤
- ⑥ ア 誤 イ 誤 ウ 正
ア 後半は行基に関する記述と考えられる
平安時代初期,仏教における学びの意義や方法を確立しようとした人物の一人として,最澄がいる。最澄についての説明として最も適当なものを,次の①〜④のうちから一つ選べ。(2015)
- ① 仏教の力によって国家の安泰をはかる鎮護国家の考え方を否定し,世俗を離れた奥山での学問と修行を重んじた。
- ② 各人の能力や資質によって到達できる悟りに違いがある,とする考え方を批判し,生あるものは等しく成仏し得る,と説いた。
- ③ 大乗菩薩戒を受けた者を官僧とするそれまでの制度を否定し,鑑真が伝えた正式な授戒儀式に立ち戻るべきだと主張した。
- ④ 入唐して天台の奥義・禅・密教を学び,帰国後,これらを総合した日本天台宗の教えを,主著『三教指帰』によって示した。
② この考えを表した言葉が一切衆生悉有仏性である
③ 逆に、大乗菩薩戒を受けさせることを提案した。
④ 『三教指帰』は空海の著作物である
次の文章は,仏教伝来後に生じた,神の捉え方の変化についての記述である。a・bに入れる語句の組合せとして正しいものを,下の①〜④のうちから一つ選べ。(2014)
神に対する信仰は,仏に対する信仰と融合し,神の前でaが行われるようになった。その理由は,神も人間と同じように苦しんでおり,神自身が,苦しみから脱することを願っているからである,と説明されている。さらに,平安時代になると,神は仏の仮の姿であるとするbが生まれている。
- ① a 祓い(祓え) b 権現思想
- ② a 祓い(祓え) b 御霊信仰
- ③ a 読経 b 権現思想
- ④ a 読経 b 御霊信仰
祓いは罪を償うための行為として位置づけられているため、苦しみ全般に対して行うのは適切ではない。
御霊信仰は、「天災は恨みを抱くなどして死んだ御霊のしわざによるものである」との考え。
誰もが仏になることができる根拠として最澄が尊重した言葉がある。その言葉として正しいものを,次の①〜④のうちから一つ選べ。
- ① 厭離穢土 欣求浄土
- ② 即身成仏
- ③ 一切衆生 悉有仏性
- ④ 則天去私
① は源信に、②は空海に、④は夏目漱石に関係の深い言葉である
天台宗の僧侶であった源信の説明として最も適当なものを,次の①〜④のうちから一つ選べ。(2014)
- ① 諸国を旅し,井戸や池を掘り,阿弥陀仏の名をとなえながら野原に遺棄された死者を火葬して歩き,阿弥陀聖と呼ばれた。
- ② 日本において往生を遂げたとされる人物の伝記を集め,『日本往生極楽記』を著し,後世の往生伝や説話集に,大きな影響を及ぼした。
- ③ 念仏をとなえれば誰でも往生することができると説き,行き合う人々に念仏札を配りながら諸国を遊行し,捨聖と呼ばれた。
- ④ 極楽浄土や地獄について述べた書物を著し,浄土に往生するためには,阿弥陀仏の姿を心に思い描く必要があると説いた。
① 空也の説明である。彼は踊念仏の創始者でもある
③ 慶滋保胤(よしげのやすね)の説明一遍の説明。往生には、もはや阿弥陀仏への信心さえも必要ないとした。
④ 阿弥陀仏の姿を心に思い描く観想念仏を重視した
念仏まとめ
-
踊念仏念仏を唱えて踊る空也が創始者で、のちに一遍が再興
-
称名念仏南無阿弥陀仏を唱える法然は往生にはこれに専念するだけでよいとした
-
観想念仏浄土の様子などを思い浮かべること源信がこれを重視したことで有名。
-
専修念仏往生には称名念仏だけでよい法然による思想。誰もが実行可能な易行であり、これはすべてのの人々を等しく救うという阿弥陀仏の本願に適しているとした。
-
唱題南無妙法蓮華経という題目を唱える日蓮が提唱
仏教関連の異名まとめ
-
阿弥陀聖空也全国を歩き、野に遺棄された死者を火葬するなどの活動から。
-
市聖(いちのひじり)これまた空也
-
捨聖(すてひじり)一遍寺院を持たず全国を遊行したため
-
遊行上人一遍
平安時代,『日本霊異記』という仏教説話集が著された。そこで語られた説話のうち,因果応報を教える説話として適当でないものを,次の①〜④のうちから一つ選べ。(2013)
- ① ある女が,処女のまま妊娠し,二つの石を産んだ。その後,この石は成長し続けた。ある日,この石が村の守り神の子どもであるというお告げがあり,人々はその石を祀り,崇めた。
- ② ある女が,子どもに捕えられた蟹を不憫に思い,自分の着物と引き換えに蟹を放してやった。後日,その女が大蛇に襲われたとき,八匹の蟹がやってきて,その大蛇を切り殺した。
- ③ ある僧が,寺院を建てるために人々から受け取った布施を自分のものにして贅沢をしていた。ある日,その僧がにわかに病にかかり,「熱い熱い」と叫びながら一夜にして亡くなってしまった。
- ④ ある僧の投げた石が,たまたま鳥に当たり,その鳥は死んでしまった。その後,その鳥の生まれ変わりである猪が,餌を探して地を掘ったとき,石が転がり落ちて,先の僧に当たり,彼は亡くなった。
末法についての記述として正しいものを,次の①〜④のうちから一つ選べ。(2013)
- ① 修行者と仏の教えだけがあって,悟る人が現れない時代が一万年続く。
- ② 修行者も悟る人もなく,仏の教えのみが伝わる時代が一万年続く。
- ③ 修行者も悟る人もなく,仏の教えも消滅した時代が一万年続く。
- ④ 修行者はいるが,仏の教えが説かれず,悟る人もない時代が一万年続く。
末法は1052年から始まったとされ、ここから浄土思想が高まります。
山鹿素行についての説明として最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。(2020)
- ① 朱子学の説く理を道徳の基礎として重視し,私利私欲をつつしむ心の修養を説くとともに,儒学と神道を融合させて垂加神道を唱えた。
- ② 朱子学の説く理を道徳の基礎として重視し,『論語』や『孟子』などの原典に立ち返ることで,日常的な道徳の規範を明らかにすることを目指した。
- ③ 朱子学の説く理が抽象的であることを批判し,私利私欲をつつしむ心の修養を説くとともに,儒学と神道を融合させて垂加神道を唱えた。
- ④ 朱子学の説く理が抽象的であることを批判し,『論語』や『孟子』などの原典に立ち返ることで,日常的な道徳の規範を明らかにすることを目指した。
山鹿素行は古学派としてしられる。この派閥は朱子学を批判したことで有名であるから、①や②は誤り。
③ 垂加神道を唱えたのは山崎闇斎である。
古文辞学に基づく経書解釈を提唱した儒学者に,荻生祖徠がいる。彼の著作として正しいものを,次の①〜④のうちから一つ選べ。
- ① 『弁道』
- ② 『聖教要録』
- ③ 『翁問答』
- ④ 『論語古義』
古学派の人物と主な研究対象の古典をまとめてみました
山鹿素行:『論語』,古学
伊藤仁斎:『論語』,古義学
荻生徂徠:『六経』,古文辞学
平安時代の中頃に活躍した仏教者についての説明として最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。(2020)
- ① 民衆に念仏を広めた源信は,市井に入り,道路や井戸の整備,無縁の死骸の火葬などを行ったことから,「市聖」と呼ばれた。
- ② 民衆に念仏を広めた空也は,市井に入り,道路や井戸の整備,無縁の死骸の火葬などを行ったことから,「市聖」と呼ばれた。
- ③ 民衆に念仏を広めた源信は,日本全国を遊行し,生活の全てを捨てて念仏ささに生涯を捧げたことから,「捨聖」と呼ばれた。
- ④ 民衆に念仏を広めた空也は,日本全国を遊行し,生活の全てを捨てて念仏に生涯を捧げたことから,「捨聖」と呼ばれた。
捨聖(すてひじり)と呼ばれたのは一遍である。
次のア・イは,町人社会に注目した人物についての説明である。その正誤の組合せとして正しいものを,下の①〜④のうちから一つ選べ。
ア 石田梅岩は,町人の営利追求を賤しいものとして否定し,「正直」と「倹約」を重んずる心学を説いた。
イ 井原西鶴は,町人たちが自らの欲望に従って,富を追求する姿や恋愛に熱中する姿を,浮世草子の中に描き出した。
- ① ア 正 イ 正
- ② ア 正 イ 誤
- ③ ア 誤 イ 正
- ④ ア 誤 イ 誤
ア 「倹約」というのは、利益追求を控えるという意味ではなく、物事をうまく活用する意。
儒学者たちが,人間は万物のなかで最も優れた存在であると説いたことに反対して,人間は「万物の悪しきもの」であると述べた賀茂真淵の著作として正しいものを,次の①〜④のうちから一つ選べ。(2014)
- ① 『国意考』
- ② 『都鄙問答』
- ③ 『万葉代匠記』
- ④ 『自然真営道』
② 石田梅岩の著作
③ 契沖による『万葉集』の注釈
④ 安藤昌益の著作
国学者である本居宣長もまた,「嬉しかるべきことは嬉しく,悲しかるべきことは悲しく」思うことを重視しているが,その思想は儒学者とは異なるものであった。宣長による儒学批判の内容として最も適当なものを,次の①〜④のうちから一つ選べ。(2016)
- ① 嬉しく思うべきこと,悲しく思うべきことの内実は,日本と中国とで異なるので,互いに尊重し合うべきなのに,儒学の教えがその差異に気づかず,己の感性のみを基準としているのは,横暴である。
- ② 何を嬉しく思い,何を悲しく思うかは一人一人違い,また同じ人でも時によって違うので,その時々の感情のまま振る舞うべきなのに,儒学の教えが一律に道理で捉えようとしているのは,的外れである。
- ③ 嬉しいことを嬉しく思い,悲しいことを悲しく思うのは,事柄に相応して感情が動く人間本来のあり方なのに,儒学の教えが何事にも道理を先立て,妄りに心を動かさないよう説いているのは。うわべを飾る偽りである。
- ④ 人間は善事に励むことを嬉しく思い,悪事に手を染めることを悲しく思うよう生まれついているのに,儒学の教えが感情を適切に発動するよう説いているのは,誰もが既にしていることを教えとした空論である。
選択肢の通りです
日本の神話を研究した本居宣長が,古代の精神を解明するうえで最も重視し,その注釈書を著した書物として正しいものを,次の①〜④のうちから一つ選べ。(2018追試験)
- ① 『古事記』
- ② 『日本書紀』
- ③ 『風土記』
- ④ 『古史通』
本居宣長が研究した古典と「見出した」ものはいくつかあるので注意。
『古今和歌集』からは「たをやめぶり」を、『源氏物語』からは「もののあはれ」を、『古事記』からは「古道」を見出している。
「古道」のことを宣長は「惟神の道」とも呼び、神の意向に従い人の手を加えない心のありようを指した。
伝統的な道徳や文化の重要性を主張した人物に三宅雪嶺がいる。彼についての説明として最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。(2018)
- ① 天皇制国家主義の立場から教育勅語の道徳を重視し,忠と孝を国民道徳の中心に据えるべきと主張した。
- ② 自己の内面を見つめることの必要を説く人格主義の立場から,東西の古典を積極的に摂取する必要を呼びかけた。
- ③ 政府の欧化主義を批判し,日本固有の風土や文化に即して西洋文明を取捨選択すべきとする国粋主義(国粋保存主義)を唱えた。
- ④ 天皇の名のもとでこそ国民の平等が達成されるとしたうえで,超国家主義の立場から国家の改造を主張した。
三宅雪嶺や志賀重昂(しげたか)は国粋主義を説いた。そのため、③となる。
①や②は日本以外の文化に重点を置いているため適当ではないと考えて消去できる。
民俗学に携わった南方熊楠についての説明として最も適当なものを,次の①〜④のうちから一つ選べ。(2021)
- ① フランスの民権思想の影響を受けて主権在民を主張し,自由民権運動の理論的指導者として活動した。
- ② 『先祖の話』を著し,歴史書に記録されない無名の人々の生活や習俗を明らかにすることを試みた。
- ③ 足尾鉱毒事件が起こったとき,農民の側に立って反対運動を行い,「民を殺すは国家を殺すなり」と訴え,この公害問題に生涯にわたって関わった。
- ④ 神社合祀によって神社やその境内の森林が破壊されることに反対し,鎮守の森の保護運動を推進した。
① 中江兆民らの説明とみられる。福沢諭吉はイギリス功利主義の影響を受けている。
②は柳田国男である。このような無名の人々を常民と呼んだ。
③は田中正造である。
自然との関わり方について考察した人物として,南方熊楠があげられる。南方熊楠の説明として最も適当なものを,次の①〜④のうちから一つ選べ。(2014)
- ① 村落共同体を生きる人々の生活に注目し,民俗学を創始した。人々にとって山は先祖の霊が帰る場所であり,人々は,ときを定めて先祖の霊と交流することができると信じていた,と説き,村落共同体の景観と信仰との関係について考察を進めた。
- ② 明治政府によって神社合祀令が出されたときに,古い社や鎮守の森が破壊されるとして反対運動を起こした。鎮守の森は,人々の信仰心や共同性を育むものとして必要であるとともに,生態学の研究対象としても重要であると主張した。
- ③ 歌人として活躍するとともに,古くからの神のあり方について研究を進めた。神の原型は,海のかなたにある常世国から定期的に村落を訪れる「まれびと」であり,人々は海のかなたに理想的な世界を思い描いていた,と説いた。
- ④ 明治時代後半に足尾鉱毒事件が起こったとき,農民の側に立って反対運動を行った。鉱毒が川に流れ込むことによって魚が死に田畑が荒れていくなかで,人々の生活と自然との強い結び付きを見いだし,「民を殺すは国家を殺すなり」と訴えた。
① 柳田国男の説明やな。そのような人々を常民と名付けた。
③ 折口信夫の説明
田中正造の説明
次の文章は,『善の研究』から始まる西田幾多郎の哲学的思索の展開について述べたものである。a〜cに入れる語句の組合せとして正しいものを,下の①〜⑧のうちから一つ選べ。(2013)
純粋経験とは,aの状態で成立するものであるが,純粋経験からすべてを説明するためには,aだけではなく,主観と客観の分化を論理的に基礎づける必要がある。そのために彼は,主客の根底を問うて,主観と客観を成立させると同時にそれを包む「b」の論理を求めた。西田によれば,「b」の論理は,有と無の対立を超えて,事物事象そのものを可能にする「c」に基づくものであった。
- ① a 主客未分 b 空 c 絶対無
- ② a 主客未分 b 場所 c 絶対無
- ③ a 主客未分 b 存在 c 絶対他力
- ④ a 主客未分 b 場所 c 無我
- ⑤ a 主客対立 b 存在 c 絶対他力
- ⑥ a 主客対立 b 空 c 絶対他力
- ⑦ a 主客対立 b 場所 c 絶対無
- ⑧ a 主客対立 b 空 c 無我
日常の生活に注目して思索を展開した思想家の一人として,柳宗悦がいる。彼についての説明として最も適当なものを,次の①〜④のうちから一つ選べ。(2017)
- ① 名もなき人々の生活に注目することによって確立された民俗学の方法を基に,日本の神の原型を探究し,神は海の彼方にある常世国に住み,時を定めて村落を訪れる「まれびと」であると主張した。
- ② 民衆が伝承してきた昔話や習俗のなかに,固有の文化があると考え,文字として残っていない琉球・沖縄の伝承や古歌謡「おもろ」に注目し,沖縄固有の民俗学の確立に尽力した。
- ③ 江戸の庶民のなかで,恋を貫こうとする意気込みやきっぱりと諦める気風が「いき」であるとして尊重されていたことを見いだし,それが日本的な美意識の根幹を成すと主張した。
- ④ 名もなき職人の熟練した手仕事によって作られた日用品のなかに,固有の実用的な美しさがあると考え,それを「民芸」と名付けて,各地の民芸品の収集や再発見を目的とした民芸運動を展開した。
① 折口信夫(しのぶ)の説明
② おそらく伊波普猷の説明とみられるが覚えなくてよい。
③ 九鬼周造の説明
Level B
広範囲の知識が問われる問題や、ちょっと考える問題です。
『古事記』について調べていた高校生Aは,世界の始まりに関する次の資料を,先生から紹介された。『古事記』の内容を踏まえて,資料から読み取れる内容として最も適当なものを,下の①〜④のうちから一つ選べ。(2021)
資料
最初にカオスが生じた。それから次に生じたのは,広き胸のガイア(大地)⋯⋯,またガイアは,実りもたらさぬ海,大波荒れるボントス(大海)をも,情愛なくして生んだ。それから,ウラノス(天)と結ばれ,深く渦巻くオケアノス(大河)を生んだ。
(へシオドス『神統記』より)
(注)ガイア,ポントス,ウラノス,オケアノスは,それぞれ自然を人格化した神の名
- ① 『古事記』では,究極の唯一神が天地を創造したとされるが,資料には,ガイアから生まれたポントスやオケアノス等複数の神々が描かれている。
- ② 『古事記』では,究極の唯一神が天地を創造したとされるが,資料には,ウラノスが生んだポントスやオケアノス等複数の神々が描かれている。
- ③ 『古事記』には,天地を創造した究極の唯一神は登場せず,資料にも,ガイアから生まれたポントスやオケアノス等複数の神々が描かれている。
- ④ 『古事記』には,天地を創造した究極の唯一神は登場せず,資料にも,ウラノスが生んだポントスやオケアノス等複数の神々が描かれている。
④ ポントスが生まれたのは、ガイアがウラノスと結ばれる前なので間違い
八百万の神々はどのような存在か。その説明として正しいものを,次の①〜④のうちから一つ選べ。(2012)
- ① 感覚を超えた絶対的に善なるもの
- ② 不可思議で良怖すべきなにものか
- ③ 全知全能にして宇宙万物の創造主
- ④ 宇宙の根底にある不変の根本原理
不可思議で良怖すべきなにものか
『古事記』に描かれる神と世界の関係についての説明として最も適当なものを,次の①〜④のうちから一つ選べ。(2013)
- ① 世界は,唯一絶対の神が混沌から作り出したものであり,この神が世界に存在するすべてのもののあり方を定めている。
- ② 世界には多数の神々が存在し,その背後には唯一絶対の神が控えている。この神を祀ることで,世界は安定を保っている。
- ③ 世界の中心には高天原があり,そこに暮らす神々が世界に存在するすべてのもののあり方を定めている。
- ④ 世界は,唯一絶対の神を根拠とするのではなく,おのずから成った世界であり,そこに多数の神々が存在している。
日本の神道には唯一絶対の神は存在しないとされる。
日本の神話や伝承で示される神についての説明として最も適当なものを,次の~のうちから一つ選べ。(2018)
- ①元来,神は特定の形をもつものではなく,人間に畏怖の念を抱かせるものや,人知を超えた不可思議な現象が神のあらわれとされた。
- ②神は善事を行うだけでなく狼藉を働くこともあったが,神の狼藉は造物主としてのアマテラスによって裁かれると考えられた。
- ③洪水や飢饉,疫病の流行といった災厄は神の祟りであり,祟りをなす神に対してはいかなる祭祀を行っても効果がないとされた。
- ④神は人間の住む世界からは隔絶した他界に存在し,自然の秩序や人々の生活に関与することはないと考えられた。
②アマテラスは創造主ではない。裁くのではなく祟り神を祀るといわれている。
③ 祭祀の目的の一つに祟りを鎮めることがある。④ 人間の生活に関与しないなら祟りなどといって祭祀も行われない。
次の文章は,神と関わりながら生きた古代の人々の心について述べたものである。a・bに入れる語句の組合せとして正しいものを,下の①〜⑥のうちから一つ選べ。(2015)
古代において,祭祀の際に求められた,神に対する心の有り様は,aと呼ばれた。後に近世の国学者たちは,和歌や神話の研究を通じ,仏教や儒教を受容する以前の古代の人々の心を探究した。例えば,賀茂真淵は,『万葉集』の基調として素朴でおおらかな「b」を見いだし,それを理想と考えた。
- ① a 高く直き心 b 清き明き心
- ② a 高く直き心 b 真心
- ③ a 清き明き心 b 高く直き心
- ④ a 清き明き心 b 真心
- ⑤ a 真心 b 高く直き心
- ⑥ a 真心 b 清き明き心
a 真心は本居宣長によって見出された、「生まれ持った心」を表す言葉。
日本における仏と神との関係についての説明として最も適当なものを,次の①〜④のうちから一つ選べ。(2018追試験)
- ① 蕃神とは,外国の神という意味であるが,仏教伝来当初は日本の神を指して使われた語である。
- ② 神宮寺とは,神前で読経するなど,神に対して仏教の儀式を行うために神社の境内に設けられた寺である。
- ③ 権現とは,仏が仮に神として現れることを指して,反本地垂迹説の立場から唱えられた語である。
- ④ 神仏分離令とは,仏教を神道から切り離し,仏教の優位を明確にするために出された法令である。
① 仏が蕃神と呼ばれた。
③ これは本地垂迹説の立場から述べられているので間違い。本地は本来の姿、すなわち仏を表し、垂迹はそれが「日本の神々」の姿で現れたものを表す。
④ 逆に神道の優位を明確にするため
仏教が伝来することによって生じた,仏と在来の神との関係についての説明として最も適当なものを,次の①〜④のうちから一つ選べ。(2017)
- ① 仏教が伝来した当初仏は異国から到来した神と認識され,人々に利益や災厄をもたらすと考えられた。平安時代になると,神は仏が人々を救済するために現れた仮の姿であるという考え方が生まれた。
- ② 仏教が伝来した当初仏は当時の人々が唯一絶対の貴い神と考えていたアマテラスと対立する存在とみなれた。平安時代になると仏はアマテラスが人々を教化するために現れた化身であるという考え方が生まれた。
- ③ 仏教が伝来した当初仏は,異国から到来した神と認識され,人々に利益や災厄をもたらす存在であると考えられた。平安時代になると,仏は神が人々を守護するために現れた仮の姿であるという考え方が一般化した。
- ④ 仏教が伝来した当初仏は,当時の人々が不可思議な現象や存在として捉えた神々と同様のものであると考えられた。平安時代になると,仏と神は異なる国に誕生した対立する存在であるという考え方が一般化した。
① このような考え方を本地垂迹説という。
② 神道で唯一絶対の神はいない上に、本地垂迹説では逆に日本の神々が仏の化身とされた。
③ ②の後半と同じ理由で間違い
本地垂迹説のように、お互いに関連付けられているから間違い
次の文章は,伝来した仏教の受容過程について述べたものである。a〜cに入れる語句の組合せとして正しいものを,下の①〜⑧のうちから一つ選べ。(2016)
奈良時代には,朝廷の主導により鎮護国家を目的として仏教が盛んに取り入れられた。なかでも聖武天皇は,諸国に国分寺・国分尼寺を建立したり,aなどの護国経典を僧に読誦させたりして,篤い仏教信仰を示している。また,朝廷は,唐から鑑真を招き,僧となろうとする者にbを授けるための制度を整えた。他方,行基らは,灌漑設備や道路・橋を造るといった社会事業を行うとともに,広く民衆に仏教を布教していった。平安中期には,念仏を称えながら諸国をめぐったcによって,民衆に浄土信仰が広められた。
- ① a 『維摩経』 b 三宝 c 空也
- ② a 『維摩経』 b 三宝 c 叡尊
- ③ a 『維摩経』 b 戒 c 空也
- ④ a 『維摩経』 b 戒 c 叡尊
- ⑤ a 『金光明経』 b 三宝 c 空也
- ⑥ a 『金光明経』 b 三宝 c 叡尊
- ⑦ a 『金光明経』 b 戒 c 空也
- ⑧ a 『金光明経』 b 戒 c 叡尊
三方は聖徳太子が憲法十七条で敬えといった仏・法・僧のことである。
次のア~ウは,仏教者が説いた修行についての説明である。その正誤の組合せとして正しいものを,下の①〜⑥のうちから一つ選べ。(2018追試験)
ア 空海は,宇宙の万物は大日如来の現れであり,また,人々の生命の根底にも大日如来の力が働いているとし,修行を通じてその力と一致することで即身成仏を遂げることができると説いた。
イ 源信は,地獄や浄土の姿を克明に描写しつつも,実は,地獄も極楽も迷いが見せる幻だとし,厳しい修行を伴う観想念仏によってありありと想い観られる仏が唯一の実在であると説いた。
ウ 道元は,ひたすら坐禅することそのもののうちに悟りが実現するとし,そうした坐禅において到達する,身も心もすべての執着から離れた自在な境地を身心脱落と呼んだ。
- ① ア 正 イ 正 ウ 誤
- ② ア 正 イ 誤 ウ 正
- ③ ア 正 イ 誤 ウ 誤
- ④ ア 誤 イ 正 ウ 正
- ⑤ ア 誤 イ 正 ウ 誤
- ⑥ ア 誤 イ 誤 ウ 正
観想念仏は、浄土(極楽と同義)に思いを寄せるものなのでこれを「幻」とするのは間違い。
日本における仏教の展開についての説明として最も適当なものを,次の①〜④のうちから一つ選べ。(2020追試験)
- ① 聖徳太子は,『三経義疏』を著したと言われており,それらを通じて虚しいこの世を今すぐ捨てて出家すべきことを人々に教えたとされる。
- ② 奈良の官寺を中心に南都六宗と呼ばれる諸学派が生まれ,唐などから伝えられた仏教の教義や理論の学術的研究が進められた。
- ③ 鑑真によって,各地の国分寺と国分尼寺に戒壇が設けられ,民衆への授戒制度が整えられたことで,庶民にも広く仏教が浸透した。
- ④ 道元ら,鎌倉時代を中心に成立した新宗派の祖師たちの多くは,高野山での修行や学びを踏まえつつも,新たに独自の教えを展開していった。
① 前半は正しいが、後半のようなことは知られていない。
③ 戒壇が設を設けたのは、鑑真というより朝廷である。
法然についての説明として最も適当なものを,次の~ のうちから一つ選べ。(2020追試験)
- ① 『選択本願念仏集』を著し,阿弥陀仏による救済を願って行う専修念仏を人々に勧めた。
- ② 『選択本願念仏集』を著し,阿弥陀仏による救済を願って行う観想念仏を人々に勧めた。
- ③ 『往生要集』を著し,阿弥陀仏による救済を願って行う称名念仏を人々に勧めた。
- ④ 『往生要集』を著し,阿弥陀仏による救済を願って行う口称念仏を人々に勧めた。
『往生要集』を著したのは源信であり、彼は観想念仏を重んじたうえに、称名念仏と口称念仏は同じものである。
阿弥陀仏の誓願(本願)についての説明として最も適当なものを,次の①〜④のうちから一つ選べ。(2012)
- ① 『無量寿経』に説かれた四十八の誓願からなり,阿弥陀仏を信じてひたむきに名号を称える者は一人残らず浄土へ往生させるという内容を中心とする。
- ② 『無量寿経』に説かれた四十八の誓願からなり,阿弥陀仏を信じてひたむきに唱題にはげむ者は一人残らず浄土へ往生させるという内容を中心とする。
- ③ 『法華経』に説かれた四十八の誓願からなり,阿弥陀仏を信じてひたむきに真言を称える者は一人残らず浄土へ往生させるという内容を中心とする。
- ④ 『法華経』に説かれた四十八の誓願からなり,阿弥陀仏を信じてひたむきに坐禅にはげむ者は一人残らず浄土へ往生させるという内容を中心とする。
法然の説いた「阿弥陀仏の誓願」に関する問題。彼はほぼ誰でも実践できる称名念仏に専念する専修(せんじゅ)念仏を説いた人物である。
① 法然が説いたのは「南無阿弥陀仏」を唱える称名念仏であるから、日蓮らによる「南無妙法蓮華経」を唱える唱題とは別。
③ 法然らの浄土宗は天台宗の流れを汲んでいるため、「真言」は別系統であり間違いとわかる
④ 法然はひたすら称名念仏にはげむだけでよいといったので、坐禅を往生の条件とはしていない
次のア〜ウは,人々を救いに導く新しい教えを説いた鎌倉時代の人物について説明したものである。その正誤の組合せとして正しいものを,下の①〜⑧のうちから一つ選べ。(2017)
ア 法然は,身分や能力に応じた念仏の唱え方を考案し,それぞれの唱え方に応じて異なる浄土に往生すると説いた。
イ 道元は,悟りを得るためには,坐禅の修行とともに師から与えられた公案について議論することが必要であると説いた。
ウ 栄西は,悟りを得るためには,坐禅の修行と戒律の遵守が必要であるとし,禅の教えが国家の安寧にも役立つと説いた。
- ①ア正イ正ウ正
- ②ア正イ正ウ誤
- ③ア正イ誤ウ正
- ④ア正イ誤ウ誤
- ⑤ア誤イ正ウ正
- ⑥ア誤イ正ウ誤
- ⑦ア誤イ誤ウ正
- ⑧ア誤イ誤ウ誤
ア 法然は、「阿弥陀仏はすべての人々を平等に扱う」と説いたので間違い。だからこそ、肉体的苦行が不要で(ほぼ)誰にでもできる称名念仏を説いたのである。
イ 公案は栄西らの臨済宗のものである。道元は、悟りを得るには、ただ座禅あるのみという只管打坐を説いたことで有名。
次の文章は,宗派の異なる僧の争いを描く狂言『宗論』に ついての記述である。文章中のa〜cに入れる語句の組合せとして正しいものを,下の①〜⑧のうちから一つ選べ。(2018追試験)
二人の僧は旅の途中であり,一人は宗祖が晩年に隠棲したaに参詣した帰りであり,もう一人は善光寺参りの帰りである。相手の宗派に気づいた二人は「例の黒豆数へ」「例の情強者」と心のうちに相手を謗る。「黒豆数へ」とはその宗派の人々が黒玉の数珠をつまぐって念仏したことを嘲ったものであり,「情強者」とは四箇格言にみられるようなこの宗派の激しさへの揶揄である。互いに譲らぬ二人は踊り念仏と踊り唱題で競うが,その激しさにつられて口にする文句が途中で入れ代わってしまう。つまり,善光寺参りの「黒豆数へ」が 「 b 」と言い,他方がその逆を唱えてしまうのである。はっとして口を押さえる二人だが,考えてみれば,これらの宗派の母胎とも言えるcは両方の要素を含んでいる。比叡山という本源を共有する二人の僧は仲直りし,互いの教えに「隔てはあるまじ」という二人の唱和で,狂言はめでたく結ばれるのである。
- ① a 高野山 b 南無阿弥陀仏 c 天台宗
- ② a 高野山 b 南無阿弥陀仏 c 律宗
- ③ a 高野山 b 南無妙法蓮華経 c 天台宗
- ④ a 高野山 b 南無妙法蓮華経 c 律宗
- ⑤ a 身延山 b 南無阿弥陀仏 c 天台宗
- ⑥ a 身延山 b 南無阿弥陀仏 c 律宗
- ⑦ a 身延山 b 南無妙法蓮華経 c 天台宗
- ⑧ a 身延山 b 南無妙法蓮華経 c 律宗
「例の情強者」と揶揄されたのは日蓮宗で、唱題では「南無妙法蓮華経」を唱えるはず。
「例の黒豆数へ」と揶揄されたのは浄土宗とみられ、「南無阿弥陀仏」を唱える称名念仏に専念すべきとの思想(専修念仏)がある。
次ページのノートは,次の絵(音神の都合上省略)に関する先生の指摘と,高校生Bがこの絵を見て感じた疑問,さらにその疑問についてB自身が調べた結果を書き留めたものである。ノート中のa・bに入る記述の組合せとして正しいものを,次ベージの①〜④のうちから一つ選べ。(2021)
ノート
先生の指摘
・右下の屋敷内に手を合わせた人物がいる。
・右下の人物のもとへ雲に乗った仏や菩薩たちがやって来ており,その中心にひときわ大きな仏が描かれている。
感じた疑問
(ⅰ)ひときわ大きな仏は,何者なのか。
(ⅱ)この仏や菩薩たちは,何をしにやって来たのか。
(ⅲ)どうしてこのような絵が描かれたのか。
調べた結果
(i)ひときわ大きな仏は,阿弥陀仏である。
(ⅱ)この仏や菩薩たちは,aためにやって来た。
(ⅲ) 平安時代後期から鎌倉時代にかけて,「今はb時代なのだ」と強く意識された。そのような時代には,阿弥陀仏の力に頼るしかないと考えられたため,このような絵が描かれた。
- ① a 右下の屋敷内の人物を極楽往生に導く
b 仏の教えだけが残っており,正しい修行も悟りもない - ② a 右下の屋敷内の人物を極楽往生に導く
b 仏の教えとそれに基づく修行のみが存在し,悟りのない - ③ a 右下の屋敷内の人物に現世利益をもたらす
b 仏の教えだけが残っており,正しい修行も悟りもない - ④ a 右下の屋敷内の人物に現世利益をもたらす
b 仏の教えとそれに基づく修行のみが存在し,悟りのない
末法思想では、釈迦の入滅から千年は、教(教え)、行(修行)、証(悟り)の三つが備わる正法の時代である。その後の千年は教と行のみが残る像法、その後の1万年は教のみが残る末法の世となる。
次のレポートは,高校生Cがまとめたものの一部である。レポート中のa・bに入る記述を,下のア〜オから選び,その組合せとして最も適当なものを,下の①〜⑥のうちから一つ選べ。(2021)
レポート
道元は,a,と考えていた。また,時間に関して,本来的な時間とは,一方向に進んでいくものではなく,「今というこの瞬間」が絶え間なく連続しているものと捉えていた。このような時間の捉え方が、bという「修証一等」の考えにも関係しているのではないだろうか。
ア ひたすら坐禅に打ち込み,一切の執着から解き放たれることが重要である
イ 南都六宗の立場から念仏によらない修行のあり方を捉え直す必要がある
ウ 自らは罪深い凡夫であるため,自力によって悟りを開くことができない
エ 三密の修行によって,仏と一体になることができる
オ 修行とは悟りの手段ではなく,悟りそのものである
- ① a-ア b-エ
- ② a-ア b-オ
- ③ a-イ b-エ
- ④ a-イ b-オ
- ⑤ a-ウ b-エ
- ⑥ a-ウ b-オ
朱子学に関わりのある江戸時代の思想家の説明として最も適当なものを、次の①〜④のうちから一つ選べ。(2017)
- ① 藤原惺窩は,朝鮮の朱子学から影響を受け,現実の秩序を軽視する仏教に疑問をもち時期・場所・身分に応じた道徳的実践を説いた。
- ② 山崎闇斎は,自己を修める方法として朱子学で説かれる敬を重視し,君臣関係の絶対性を強調した。
- ③ 貝原益軒は,朝鮮の言語や文化の研究を行い,日本と朝鮮の文化交流に尽力して,国家を超えた普遍的な原理の必要性を述べた。
- ④ 佐久間象山は,アヘン戦争を契機に,それまで信奉していた朱子学を批判し,西洋の道徳と技術を取り入れることの重要性を主張した。
① 前半部は正しいが、「道徳が時・処・位によって行われるべき」としたのは中江藤樹やねん。ちなみにその中江藤樹が道徳の根底に置いたのは「孝」で、無差別的な愛のことである。
③ 多分人違い
④ 西洋の技術と、東洋の道徳を重視した。あくまでも道徳は東洋らしい。
次のア〜ウは,理想的な人倫やそれを実現するための実践をめぐる様々な考え方を示した,江戸時代の思想家についての説明であるが,それぞれ誰のことか。その組合せとして正しいものを,下の①〜⑧のうちから一つ選べ。(2015)
ア 近世の封建的身分秩序のなかで,善を実現するには,居敬窮理の工夫が必要であると説いた。居敬窮理とは,欲望を抑えて心身をつつしみ,天地や人倫の秩序を根拠づける上下定分の理を,明らかにすることである。
イ 農民に寄生する武士が支配者として上に立つ当時の社会を批判し,理想社会としての自然世へ復帰すべきであると説いた。自然世とは,すべての人々が平等に田畑を耕し,衣食住を自給する社会のことである。
ウ 農業とは天道と人道があいまって成立する営みである,との考えに基づき,勤労や倹約といったあるべき生活態度を説いた。天道とは自然の営みのこと,人道とは,そこから人間が恵みを得ようとする作為のことである。
- ① ア 藤原惺窩 イ 安藤昌益 ウ 石田梅岩
- ② ア 藤原惺窩 イ 安藤昌益 ウ 二宮尊徳
- ③ ア 藤原惺窩 イ 貝原益軒 ウ 石田梅岩
- ④ ア 藤原惺窩 イ 貝原益軒 ウ 二宮尊徳
- ⑤ ア 林羅山 イ 安藤昌益 ウ 石田梅岩
- ⑥ ア 林羅山 イ 安藤昌益 ウ 二宮尊徳
- ⑦ ア 林羅山 イ 貝原益軒 ウ 石田梅岩
- ⑧ ア 林羅山 イ 貝原益軒 ウ 二宮尊徳
林羅山が考えた窮理に基づく実践として正しいものを,次の①〜④のうちから一つ選べ。(2013)
- ① 真実無偽
- ② 万人直耕
- ③ 存心持敬
- ④ 知行合一
② は安藤昌益の思想である
次のア〜ウは,人間として望ましい行いについて説いた江戸時代の思想家の説明であるが,それぞれ誰のことか。その組合せとして正しいものを,下の①〜⑥のうちから一つ選べ。(2014)
ア 徳川方の武士として軍功をたて,後に禅僧となった。武士・農民・職人・商人のいずれも,自らの生業を通じて仏と成ることができると説き,商人は,売買の営みを,天道から与えられた役目として受けとめ,正直を旨として商いに励むべきであると述べた。
イ 中江藤樹のもとで儒学を学んだ。そして,「治国平天下」という儒学の理念を,現実との関わりのなかで考え,例えば,樹木を切り尽くすと山の保水力が乏しくなり水害が起こりやすくなるので,山林を保護すべきであると主張した。
ウ 独学で,神道・仏教・儒教を学び,自らの商人としての体験を踏まえ,人の道について考察した。倹約と正直に基づいた,商いによる利益の追求を,天理にかなう正当な行為であるとし,倹約と正直という徳は,すべての人が守るべき道であると説いた。
- ① ア 石田梅岩 イ 熊沢蕃山 ウ 鈴木正三
- ② ア 石田梅岩 イ 鈴木正三 ウ 熊沢蕃山
- ③ ア 熊沢蕃山 イ 石田梅岩 ウ 鈴木正三
- ④ ア 熊沢蕃山 イ 鈴木正三 ウ 石田梅岩
- ⑤ ア 鈴木正三 イ 石田梅岩 ウ 熊沢蕃山
- ⑥ ア 鈴木正三 イ 熊沢蕃山 ウ 石田梅岩
日本の儒学者についての説明として最も適当なものを, 次の①〜④のうちから一つ選べ。(2018追試験)
- ① 室鳩巣は,もと僧であったが,仏教を出世間の教えであると批判し,還俗して儒学者となった。彼は僧侶などの教養であった儒学を学問として独立させ,林羅山などを育成した。
- ② 山鹿素行は,はじめ儒学を学んだが,後に日本にふさわしい実践的な道徳として武士道を唱えた。彼の説いた武士道は,主君のために死ぬことを本質とする,伝統的な武士のあり方を継承したものであった。
- ③ 中江藤樹は,はじめ朱子学を学んだが,後に王陽明の思想に出会ってこれに共感し,日本陽明学の祖となった。彼は,人間には善悪を正しく知る良知がそなわっているとし,良知に基づく日常的な実践を説いた。
- ④ 荻生徂徠は,聖人のつくった礼楽刑政を重んじた。それゆえ,彼は赤穂浪士の討ち入りについて,浪士たちの示した藩主への忠義は幕府の法秩序に優先すると考え,浪士たちを義士として誉め称えた。
① 藤原惺窩の説明である。室鳩巣も彼の流れをくむ。
②は山本常朝の「武士道といふは死ぬことと見付けたり」の説明である。山鹿素行はそのような武士道のありかたを批判し、儒教に基づく士道を説いている。
④ 前半は正しいが、彼が重要視した「礼楽刑政」はまさに法秩序などのことであり、忠義がそれに優先するとは考えないだろう。
レポート中のa・bに入る語句や記述の組み合わせとして正しいものを,下の①〜④のうちから一つ選べ。(2021)
レポート
江戸時代に入ると,儒者たちは,現実的な人間関係を軽視するものとして仏教を盛んに批判し始めた。そうした儒者の一人であり,徳川家康ら徳川家の将軍に仕えたaは,「持敬」によって己の心を正すことを求めた儒学を講じ,bと説いた。一方,泰平の世が続き都市経済が発展するとともに,中世以来の厭世観とは異なる現世肯定の意識が町人の間に育まれていった。その過程で武家社会と異なる様々な文化や思想が町人社会にも形成されていくこととなった。
- ① a 林羅山
b「理」を追求するのではなく,古代中国における言葉遣いを学び,当時の制度や風俗を踏まえて,儒学を学ぶべきである - ② a 林羅山
b 人間社会にも天地自然の秩序になぞらえられる身分秩序が存在し,それは法度や礼儀という形で具現化されている - ③ a 荻生徂徠
b「理」を追求するのではなく,古代中国における言葉遣いを学び,当時の制度や風俗を踏まえて,儒学を学ぶべきである - ④ a 荻生徂徠
b 人間社会にも天地自然の秩序になぞらえられる身分秩序が存在し,それは法度や礼儀という形で具現化されている
次のア〜ウは,自然や世界について実証的考察を行った思想家についての説明であるが,それぞれ誰のことか。その組合せとして正しいものを,下の①〜⑥のうちから一つ選べ。(2013)
ア 動植物への関心から博物学的な知のあり方を追究する一方で,日用の道徳を分かりやすく説くなど,朱子学を日常に活かす試みを行った。
イ懐徳堂に学び,地動説に基づく独自の宇宙論を展開し,合理主義的観点から,霊魂の存在を認めない無鬼論を展開した。
ウ 懐疑的態度から世界のあり方を問い,気や理などの朱子学の用語を用いて自然の法則を探究し,条理学を構築した。
- ① ア 貝原益軒 イ 三浦梅園 ウ 山片蟠桃
- ② ア 貝原益軒 イ 山片蟠桃 ウ 三浦梅園
- ③ ア 三浦梅園 イ 貝原益軒 ウ 山片蟠桃
- ④ ア 三浦梅園 イ 山片蟠桃 ウ 貝原益軒
- ⑤ ア 山片蟠桃 イ 貝原益軒 ウ 三浦梅園
- ⑥ ア 山片蟠桃 イ 三浦梅園 ウ 貝原益軒
問題文の通りです
近世の文芸や思想において,他者に対する関わり方を示した人物の説明として最も適当なものを,次の①〜④のうちから一つ選べ。(2015)
- ① 人形浄瑠璃の脚本家であった近松門左衛門は,儒学的な人倫において重んじられる人情と,恋人に対する義理との間で苦しんだ男女が,最後には身を破滅させる物語を,共感的に描いた。
- ② 浮世草子の作者であった井原西鶴は,金銭欲や色欲にまかせて享楽的に他者と関わる生き方を,当時における町人の有り様として肯定的に描き出し,勤勉や倹約の意義を否定した。
- ③ 鍋島藩の武士であった山本常朝は『葉隠』において,主君に対する絶対的忠誠とそれに根差した死の覚悟を説き,民に対する為政者としての自覚を求める士道とは異質の武士道を示した。
- ④ 国学の祖と言われる契沖は,事物にふれて動く感情をつくろわない,「もののあはれ」を知る人だけが,他者の悲しみに共感できるとし,情欲を制しようとする儒学的な道徳を批判した。
① 選択肢では、義理と人情が逆になっている。
② 勤勉や倹約の意義は否定していない。
④ 契沖は国学の袖はあるが、「もののあはれ」については本居宣長の思想である。
古典を基に日本固有の精神を探究した国学者の説明として最も適当なものを,次の①〜④のうちから一つ選べ。(2017)
- ① 契沖は,古典を原典に即して読解しようとする実証的な方法により,古代日本の精神を伝える古典として『万葉集』を研究し,その注釈書である『万葉代匠記』を著した。
- ② 荷田春満は,儒学・仏教・神道を通して己の理想的な心のあり方を究明する心学の方法を基にして,古代日本の心を伝える古典として『日本書紀』を実証的に研究した。
- ③ 本居宣長は,『源氏物語』の研究を通して,事物にふれて生じるありのままの感情を抑制する日本古来の精神を見いだし,儒学や仏教などの外来思想によって,その精神が失われたと考えた。
- ④ 平田篤胤は,『古事記』の研究を通して,身分の相違や差別のない日本古来の理想世界を見いだし,儒学や仏教などの外来思想によって理想世界が差別と搾取の世界へ転じたと批判した。
③ 彼が『源氏物語』から見出した「もののあはれ」は「ありのままの感情」だから間違い
④ 古事記が書かれた時も普通に身分がある。飛鳥時代の時点で、「身分にかかわらず優秀な人材を」と聖徳太子が冠位十二階を定めるほどである。
本居宣長が「もののあはれ」について説いた内容の説明として最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。(2020追試験)
- ① 理屈に偏った漢意を捨て,「もののあはれ」を知ることによって,人は物事の情趣を素直に感受する「心ある人」となることができる。
- ② 儒教や仏教などの考え方を排し,「もののあはれ」を知ることによって,人は素朴で力強い「高く直き心」を取り戻すことができる。
- ③ 物語や和歌などを深く味わい,「もののあはれ」を知ることによって,人は無常観を深め,仏に通じる慈悲の心を培うことができる。
- ④『古事記』をはじめとする古い神話や物語を学び,「もののあはれ」を知ることによって,人は古来の経世済民の道を実践することができる。
② これを説いたのは賀茂真淵である。
③ 仏教思想は「もののあはれ」を抑制するものと説いているので誤り。
「経世済民の道」は荻生徂徠の思想。
次の文章は,近代日本における「市民」の道徳について考えた人物の思想に関する説明である。文章中の A ~ C に入れる語句の組合せとして正しいものを,次の①~⑥のうちから一つ選べ。(2020)
幸徳秋水が師事した[ A ]は,『三酔人経綸問答』の中で「民主平等の制」とは「国人をして皆学に就きて君子と為るの手段を得せしめ」るものだと述べた。
「君子」とは,儒教の伝統において有徳者や有徳な為政者を意味する概念である。また彼は,[ B ]を翻訳する際,通常は「市民」と訳される「シトワイヤン」を,「君子」の類義語である「士」と訳した。このような,「市民」とはかつての「君子」や「士」のような道徳的人間であるとする考え方の背景には,彼がフランスで学んだ,「市民の徳」を重視する[ C ]という思想の影響があった。
- ① A 片山潜 B 『社会契約論』 C 共産主義
- ② A 片山潜 B 『自由論』 C 共和主義
- ③ A 片山潜 B 『自由論』 C 共産主義
- ④ A 中江兆民 B 『社会契約論』 C 共和主義
- ⑤ A 中江兆民 B 『社会契約論』 C 共産主義
- ⑥ A 中江兆民 B 『自由論』 C 共和主義
幸徳秋水は中江兆民の弟子である。
B 『自由論』を訳したのは啓蒙思想家でもしられる中村正直(まさなお)である。
C 市民に道徳性を特別求める考え方は共産主義とは関係ない。共和主義である。
「天道」との関わりにおいて,人間の実践を能動的なものとして捉えようとした思想家の一人に吉田松陰がいる。彼の思想についての記述として最も適当なものを,次の①〜④のうちから一つ選べ。(2012)
- ① 天道にかなうとは,功名や利欲を離れた純粋な心情に徹し,己の誠を尽くすことにほかならない。我が国の主君に忠を尽くす勤皇の精神は,この誠において,天道に通じている。
- ② 日常卑近な人間関係における愛こそが天道にかなうものである。人々が孔子の道に立ち返り,他者に対して忠信や恕の実践に努めるならば,互いに愛し親しむ和合が実現する。
- ③ 日々営まれる農業こそ,自然の根源的な生成活動としての天道にかなう営みである。万人が直接に農業に携わる自給自足の生活に復帰すべきであり,農民に寄生している武士や町人は無用である。
- ④ 天道は事物のおのずからなる働きであるが,そこに人道が加わることによって事物の働きは完全になる。分に応じた倹約によって得た富を社会に還元することによって,天地や他者の恩恵に報いなければならない。
② 伊藤仁斎に代表される古義学の思想
③ 安藤昌益の万人直耕や不耕貪食の徒の思想
④ 二宮尊徳の思想
西洋諸国と渡り合える強さや知を目指した人物につい ての説明として最も適当なものを,次の①〜④のうちから一つ選べ。(2020追試験)
- ① 志賀重昂は,「堯舜孔子の道を明らかにし,西洋器械の術を尽くす」ならば,道理と富国強兵がともに実現すると考えた。
- ② 津田真道は,医学をはじめとする蘭学を広く教授する私塾を開き,福沢諭吉ら多くの人材を輩出した。
- ③ 高野長英は,西洋の砲術などを学び,西洋から科学技術を摂取する必要性を説き,門人の吉田松陰らに影響を与えた。
- ④ 中村正直は,スマイルズや J. S. ミルの著作を翻訳し,西洋における自助の精神や自由の考え方を日本に紹介した。
① 横井湘南についての説明である。志賀重孝は国粋主義者で、欧化政策そのものを批判している。
③ 佐久間象山についての説明である。
日本において西洋近代思想の普及に努めた思想家の一人として,徳富蘇峰がいる。彼についての説明として最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。(2020)
- ① 政府主体の欧化主義を批判し,民衆主体の近代化を重視する平民主義を唱えたが,後年は国家主義の立場に転じた。
- ② 幸徳秋水らと共に平民社を設立し,平民主義・社会主義・平和主義を三つの柱とする『平民新聞』を創刊した。
- ③ 明六社で天賦人権論や立憲政治の紹介に努めたが,後年はスペンサーの社会進化論に基づいて国家主義を主張した。
- ④ 結婚を男女の対等な契約と捉えて一夫一婦制を主張し,後年は初代文部大臣となって学校制度の確立に尽力した。
② たしかに平民主義を唱えてはいたが、誤り。
③ 加藤弘之の説明。
④ 森有礼の説明。彼は一橋大学の創設者でもある
ほかに有名な啓蒙思想を唱えた人物として、功利主義や自由主義を紹介した中村正直(まさなお)や西周、福沢諭吉がいる
次のア・イは,江戸時代に民衆の生き方を説いた思想家についての説明であるが,それぞれ誰のことか。その組合せとして正しいものを,下の①~⑥のうちから一つ選べ。(2020)
ア もとは徳川家に仕える武士であったが,出家して僧侶となった。従来の仏教の隠遁的な傾向に反対し,士農工商のいずれであっても,この世においてそれぞれの職業に専念することが,仏道の修行であると説いた。
イ 農家に生まれたが,独学して農政家となり,幕府にも登用された。人は自然や祖先の恩に徳をもって報いるべきであり,そのために,収入に応じて支出を制限し,そこから生じた余剰を社会に還元すべきであると説いた。
- ① ア 鈴木正三 イ 二宮尊徳
- ② ア 鈴木正三 イ 安藤昌益
- ③ ア 鈴木正三 イ 石田梅岩
- ④ ア 西川如見 イ 二宮尊徳
- ⑤ ア 西川如見 イ 安藤昌益
- ⑥ ア 西川如見 イ 石田梅岩
二宮尊徳は、万物のおのずからのはたらきである天道に対して、それを倹約的に制限する人道を重視した。具体的には、「支出の制限」が分度に、「余剰の還元」が推譲にあたる。
西川如見は天文学者で、アメリカ大陸の存在を初めて日本に紹介した人物といわれる。
次の文章は,近世において学問がどのように学ばれていたかについての説明である。文章中の a ~ c に入れる語句の組合せとして正しいものを,次の①~⑧のうちから一つ選べ。(2018)
近世に学問が興隆した背景の一つに,出版業の発展がある。 a は,初学者に向け,和文で『大和本草』『養生訓』などを著し,その書は広く読まれた。
書物の普及につれて,塾や学校が各地に設立された。例えば,懐徳堂からは,儒学や仏教などがいかに歴史的に展開するかに関して加上説という考え方を唱えた b など,独自の学説を打ち出す人物が数多く輩出した。
塾や学校では,漢籍の素読のほか,師匠による講釈,現在の読書会にあたる会読などが行われた。山崎闇斎は,朱子学の真髄を伝えようとして講釈を重要視したが,朱子の解釈に頼らず儒学の原典に直接向き合うことを重視したc は,講釈よりも会読を重視した。このように,思想的立場の違いは教え方の違いにも反映された。
- ① a 貝原益軒 b 安藤昌益 c 新井白石
- ② a 貝原益軒 b 安藤昌益 c 荻生徂徠
- ③ a 貝原益軒 b 富永仲基 c 新井白石
- ④ a 貝原益軒 b 富永仲基 c 荻生徂徠
- ⑤ a 本居宣長 b 安藤昌益 c 新井白石
- ⑥ a 本居宣長 b 安藤昌益 c 荻生徂徠
- ⑦ a 本居宣長 b 富永仲基 c 新井白石
- ⑧ a 本居宣長 b 富永仲基 c 荻生徂徠
問題文の通りです
古代の日本の思想についての説明として最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。(2020)
- ① 自然の様々な事物に宿る八百万の神々への信仰が,外来思想の影響を受けることなく,神道と呼ばれる日本独自の宗教として体系化された。
- ② 古代国家が形成される過程で,『古事記』や『日本書紀』が編纂され,神々の系譜が天皇につながる神話として統合された。
- ③ 日本神話では,天地はおのずから「なった」のではなく,伊邪那岐命と伊邪那美命の二神の意志によって「つくられた」とされている。
- ④ 罪や悪は,人間の心の中から出てくる穢れであると考えられたため,それを清めるための儀式として,禊や祓があった。
① 神道は途中仏教や儒教の影響を受けながら発展してきた。
③ 古事記によると、二神はともに高天ヶ原に降り立っているので、その以前に天地がおのずから「なった」ことがうかがえる。
④ 穢れは「付着する」ものと考えられていたので誤り。
無常観に関連する日本の美意識についての説明として適当でないものを,次の①~④のうちから一つ選べ。(2020)
- ① 西行は,各地を遍歴しながら人生の無常を和歌に詠み,それらは後に『山家集』に収められた。彼は,桜の花や月といった自然の風景に思いを託し,「願わくは花の下にて春死なむその如月の望月の頃」などの歌を詠んだ。
- ② 吉田兼好は,無常な人生をいかに生きるべきかに思いを巡らせ,『徒然草』を著した。「世はさだめなきこそ,いみじけれ」という彼の言葉は,この世は儚く移ろいゆくがゆえに味わい深いとする美意識を表現している。
- ③ 雪舟は,色彩を否定した絵画技法である「水墨画」を大成し,『風姿花伝』を著した。「秘すれば花なり,秘せずは花なるべからず」という彼の言葉は,切り詰められた簡素な表現にこそ,美が現れることを説いている。
- ④ 九鬼周造は,江戸時代から受け継がれてきた「いき」という美意識を哲学的に分析し,『「いき」の構造』を著した。彼によれば,「いき」とは,「諦め」や「意気地」をもって,偶然的で儚いこの世を軽やかに生きる生き方である。
② 風姿花伝を著したのは世阿弥であるから間違い
日蓮についての説明として適当でないものを,次の①~④のうちから一つ選べ。(2018)
- ① 個人の救済だけでなく,正しい仏法に基づく政治の実現が重要だと考え,為政者への布教も行うことで,現実社会を仏国土とすることを目指した。
- ② 国難の到来を防ぎ,国土安穏を実現するためには,宗派間での融和を図ることが必要だと考え,他宗に協力を呼びかけた。
- ③ 『法華経』には,釈迦は時を超えて永遠に存在し続けると説かれていることに着目し,末法の世であっても救済は達成され得ると主張した。
- ④ 『法華経』には,人々の救済に献身する菩薩が描かれていることに着目し,その姿に自己をなぞらえることで教えを説こうとした。
日蓮は他の宗派を罵ったことで有名なので融和を図ることが必要とは考えていない。
石田梅岩についての説明として最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。(2018)
- ① 心を磨くための教えとして,儒教だけではなく神道や老荘思想も柔軟に取り入れながら自説を形成したが,仏教を排斥しようとする姿勢を崩すことはなかった。
- ② 商家で奉公していた経験を活かし,京都の自宅で日常生活に即した平易な講話を行った。受講料を取らず,聴講は自由としたが,女性の聴講を認めることはなかった。
- ③ 身分を上下関係としてではなく社会的分業を示すものと捉え,職業に励むことでそれぞれの役割を果たすことを人々に勧めたが,身分制そのものを否定したわけではなかった。
- ④ 当時,蔑視されがちであった商業行為を肯定し,品物を流通させることで為政を助ける点に積極的役割を認めた。だが,利益を獲得することを肯定したわけではなかった。
① 仏教も抱擁していた。
② 女性の聴講を認めていた
④ 梅岩は、商人の利益は武士の俸禄と同じで、肯定されるべきものとしたので誤り。
西洋の知識を積極的に取り入れた思想家についての説明として最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。(2018)
- ① 西周は,アメリカから帰国した後に,同志社英学校を創立して,キリスト教の精神に基づく教育を行った。
- ② 植木枝盛は,ルソーの『社会契約論』を翻訳した『民約訳解』を出版し,日本の実情に即した民権のあり方を説いた。
- ③ 西周は,「門閥制度は親の敵」と述べ,欧米への視察旅行で得た知見をもとに,封建的な秩序や意識を批判した。
- ④ 植木枝盛は,西洋の民権思想をもとに主権在民の必要を説き,人民には政府の専制に対して抵抗する権利があると主張した。
同志社を創立したのは新島襄である。
『社会契約論』を訳し『民約訳解』を出版したのは中江兆民である。だって東洋のるそうだもの。
「門閥制度は親の敵」は福沢諭吉の有名なセリフ
次の文章は,近代に入り,西洋の思想や文化に接した思想家についての記述である。a〜cに入れる語句の組合せとして正しいものを,下の①〜⑧のうちから一つ選べ。(2017)
明治維新以後,多くの人々が,欧米諸国へ留学し,様々な思想や文化を日本へ紹介した。イギリスに留学した中村正直は,aと題する翻訳書を著し,個人の自由について,「他人ニ損害ノ及バヌダケハ,己ガ意ノママナルベク」などと訳して紹介した。フランスに留学した中江兆民は,帰国後に自由民権論を展開し,民権には人民が自ら勝ち取ったものと,為政者が人々に恵み与えるものがあり,このうち,日本の現状では,まずb民権を守り育てていくべきであると説いた。
欧米の思想や文化の本格的な流入に伴い,日本の伝統や価値観を再評価し,尊重する動きも生まれた。政府の進める欧化政策に反対したcは,対外的には各国の国民に固有なあり方を,対内的には国民の統一を意味する国民主義を主張した。
- ① a 『私の個人主義』 b 恩賜的 c 陸羯南
- ② a 『私の個人主義』 b 恩賜的 c 徳富蘇峰
- ③ a 『私の個人主義』 b 恢復(回復)的 c 陸羯南
- ④ a 『私の個人主義』 b 恢復(回復)的 c 徳富蘇峰
- ⑤ a 『自由之理』 b 恩賜的 c 陸羯南
- ⑥ a 『自由之理』 b 恩賜的 c 徳富蘇峰
- ⑦ a 『自由之理』 b 恢復(回復)的 c 陸羯南
- ⑧ a 『自由之理』 b 恢復(回復)的 c 徳富蘇峰
a 『自由之理』はJ.S.ミルの『自由論』を翻訳したもの
b 恢復的民権は「為政者が人々に恵み与えるもの」の方。「日本の現状」を鑑みた上での結論
c 以下に急進的な欧化に反対した○○主義をまとめてみた。
徳富蘇峰:平民主義
陸羯南:国民主義
三宅雪嶺・志賀重昂:国粋主義
次の文章は,内村鑑三がキリスト教の伝道活動に専念し始めた時期に書いたものである。その内容の説明として最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。(2018)
罪から救われた者がまだ罪に沈んでいる者を救おうとするのが伝道であり,救済である。私が救済を唱えるのは,私が完全無欠の人であるからではなく,私はかつて病を癒されたことがあるから,その快さを他人と分かち合いたいと思うからにほかならない。……私たちは世の人々を教えようとする教師ではなく,体験したことを世の人々に分かとうとする表白者である。私たちは人々を私たちのもとに導こうとする者ではなく,私たちを経由して人々を神のもとへと導こうとする者である。したがって,私たちは欠点を指摘されることを厭わない。なぜならば,私たちの欠点はかえって神の完全性を示すことになるからであり,私たちの弱さは神の強さを確認させることになるからである。
(「基督教と師弟の関係」より)
- ① キリスト教の伝道は,罪に沈む人々を伝道者の力で直接に救済するものではないのだから,伝道者は弱き自己が救済された体験を伝えることに徹するべきであり,神の完全性を示すことを目指すべきではない。
- ② キリスト教の伝道は,伝道者が弱さを自ら克服した体験を語ることによって,人々に弱さを克服する意志をもたせるものである。したがって,伝道者のもつ弱さは,伝道を行ううえでかえって好都合ともなり得る。
- ③ キリスト教の伝道は,人々を神に出会わせるという重責を担っているため,伝道者は自らの弱さを自覚し,厳しい自己鍛錬によって神の強さに少しでも近づくことができるよう努めなければならない。
- ④ キリスト教の伝道は,人々を神に出会わせ,罪から救われる喜びを伝えるものである。その際に,伝道者のもつ弱さが人々に露わになったとしても,そのことはかえって神の強さを示すことにもなり得る。
① 最初に、罪に沈む人々を救済するのが伝導と書かれているので明らかに間違い。
②③ 「私たちの弱さは神の強さを確認させることになる」とあるから、強くなるよう努めよとは言っていない。
日本の社会主義に関わりをもつ人物についての説明として適当でないものを,次の①〜④のうちから一つ選べ。(2018追試験)
- ① 木下尚江はキリスト教的人道主義に基づく社会主義者であり,日本最初の社会主義政党の結成に参加した。
- ② 河上肇はマルクス主義に基づく社会主義者であり,資本主義に特有の問題としての貧困を論じ,『貧乏物語』を著した。
- ③ 石川啄木は『一握の砂』などを著した文学者であったが,大逆事件などをきっかけにして社会主義へ傾倒していった。
- ④ 大杉栄は中江兆民の民権論の流れをくむ社会主義者であり,『廿世紀之怪物帝国主義』を著して帝国主義を批判した。
社会主義は、日清戦争後の労働問題から大きく主張されるようになった。
片山潜、木下尚江、阿部磯雄(柿の下安部居そお)の3人は幸徳秋水らとともに社会民主党を結成したが、3人ともキリスト教徒である。
④ は幸徳秋水の説明である。
次のア〜ウのうち,西田の説く純粋経験に当てはまる事例として適切なものはどれか。その組合せとして最も適当なものを,下の①〜⑦のうちから一つ選べ。(2016)
ア Aさんは,合唱をしているうちに,自分の歌声の音程がずれていることに気づき,隣りの人の声に合わせながら歌った。
イ Bさんは,鏡を見ながら自画像を描いているうちに,自分の姿を描いていることも忘れて,筆を動かし続けた。
ウ Cさんは,幼少期のアルバムを眺めているうちに,今はもう忘れているが,自分にもこういう無垢なころがあったのだと思い至った。
- ①ア
- ②イ
- ③ウ
- ④アとイ
- ⑤アとウ
- ⑥イとウ
- ⑦アとイとウ
西田の純粋経験は、主観と客観が分かれたり、具体的感情がわいたりする前の段階のものである。
ア・ウでは「自分(主観)」と「隣の人・昔の自分」(客観)を分けてしまっている。さらに、ウでは「無垢」という感想が出てしまっている。
日本の神についての和辻哲郎の考えとして最も適当なものを,次の①〜④のうちから一つ選べ。(2016)
- ① 天皇は神聖にして侵すことのできない神であるから,忠孝一本という道徳に基づいて天皇に奉仕するのが日本人の責務である。
- ② 人は死後に遠い彼方の世界に行くのではなく,身近な山などに留まって,子孫を見守る神となり,定期的に子孫のもとを訪れ,豊穣をもたらす。
- ③ 神とは,共同体の外部から来訪し人々の饗応を受けて去る存在であり,その様を模倣することで各種の芸能が成立した。
- ④ 日本神話には唯一絶対の究極神は存在せず,最も尊貴な神として祀られるアマテラスであっても,みずから他の神を祀っている。
自己や,社会に生きる人々の有り様をめぐって様々に思索した,近代以降の思想家の説明として最も適当なものを,次の①〜④のうちから一つ選べ。(2015)
- ① 西田幾多郎は,主観と客観を対立的に捉える哲学的立場を批判し,思索や反省以前の純粋経験を考究の出発点として,主観のみが確かであることを立証する『善の研究』を著した。
- ② 柳宗悦は,朝鮮陶磁器と出会ったことで,名のある芸術家が器や布などの日用品を作ることの素晴らしに気づき,生活そのものを美的にすることを目指す民芸運動の推進者となった。
- ③ 柳田国男は,共同体に生きる無名の人々を常民と呼び,文字に残されない生活様式や祭り,伝承,あるいは祖霊信仰のなかから彼らの思想を掘り起こそうとする民俗学を確立した。
- ④ 丸山真男は,新旧を問わず様々な考え方が雑居する日本の思想状況を批判し,文学や芸術に表現された直観を,哲学的思索によってつかみ直そうとする近代批評という分野を確立した。
① 「主客未分」の言葉に代表されるように、純粋経験においては主観も客観もなく、「主観のみが確か」とはならない。
「名のある芸術家」ではなく、「無名の人」を対象にした
④ 小林秀雄の解説である
風土が人々の性質やあり方に大きな影響を与えると考えた和辻哲郎による風土の類型についての説明として最も適当なものを,次の①〜④のうちから一つ選べ。(2020追試験)
- ① 砂漠(沙漠)型の風土では,人々は,過酷な乾燥で自分たちを苦しめる自然の下で,忍従的性質を持つようになる。
- ② 砂漠(沙漠)型の風土では,人々は,厳しい環境を生き抜くため,他部族の人々とも団結するので,戦闘的精神を失っていく。
- ③ 牧場型の風土では,人々は,豊かな恵みを与えてくれる自然の下で,受容的性質を持つようになる。
- ④ 牧場型の風土では,人々は,穏やかで扱いやすい自然の中に法則性を発見し,合理的精神を発達させていく。
①②逆に「過酷な自然」や「部族」に対抗すると述べられている。
③これはモンスーン型の説明である。
古来の心意を研究した折口信夫についての説明として最も適当なものを,次の①〜④のうちから一つ選べ。(2018追試験)
- ① 伝承された習俗や信仰を手がかりに民俗学的な視点から国文学を研究し,人々と神の交流を通じて文芸や芸能が発生したと考えた。
- ② 柳田国男や自己の学問を古学と呼び,それが本居宣長や平田篤胤による江戸時代の学問を受け継ぐものであると考えた。
- ③ 伝承された習俗や信仰を手がかりに古代の思想を研究し,村落にとどまる祖霊としての田の神こそが日本の神の原型であると考えた。
- ④ 柳田国男や自己の学問を新国学と呼び,それが日本の伝統文化を人類学や生物学の知見を用いて捉え直す営みであると考えた。
② 古学ではなく新国学と呼んでいる。
③ 柳田国男の説明。
④ 折口も民俗学を取り入れているので、人類・生物学ではなく言い伝えや行事を用いた。
Level C
内容の理解が問われる問題です。
アマテラスが天の岩屋戸に籠もったのは,スサノヲの犯した罪を目の当たりにしたためであった。スサノヲの行為として描かれた,古代日本における罪およびその償いの説明として最も適当なものを,次の①〜④のうちから一つ選べ。(2016)
- ① アマテラスの稲田の解を壊し,汚物をまきちらして宮殿を穢すなど,農耕や祭祀を妨害するという罪を犯したため,その償いとして,多くの物品を献じる「祓い」を科せられた。
- ② 天上世界の統治権をアマテラスから奪い取ろうとする反逆の罪を犯したため,その償いとして,ヤマタノヲロチの退治を命じられ改めて統治者に忠誠を誓う「清明心」を証し立てた。
- ③ 母であるイザナミに会いに黄泉国に赴くが,その醜さにおののいて逃げ出し,地上世界に穢れを持ち込むという罪を犯したため,その償いとして,川で身を清める「禊」を行った。
- ④ 国造りを推進するうえで草木を切り払い,鳥獣を襲うなどして,神々の宿る自然界を荒らすという罪を犯したため,その償いとして,災厄を始めとする「祟り」を引き受けた。
② 反逆の罪は犯していない。ヤマタノオロチの退治はしたが、償いでもない。
③ イザナキの説明である
④ 祟りは神によるものと考えられていた
『歎異抄』には,親鸞が,師の法然と自分の信心は同一であると語ったところ,法然も親鸞の主張を認めたと伝えられている。法然の認めた,親鸞の信心理解として最も適当なものを,次の①〜④のうちから一つ選べ。(2016)
- ① 信心は,悪人こそが阿弥陀仏による救いの本来の対象であることを理解して,救われるために悪行を犯してまでも得たものなのだから,法然と親鸞とで異なることはあり得ない。
- ② 信心は,阿弥陀仏の姿を実際に見るかのように思い描いたとき,心に生じてくるものであり,同じ阿弥陀仏を心に描いているのだから,法然と親鸞とで異なることはあり得ない。
- ③ 信心は,自分自身の努力で身に付けた知恵や才覚によって獲得したものではなく,そもそも阿弥陀仏からいただいたものなのだから,法然と親鸞とで異なることはあり得ない。
- ④ 信心は,行によって悟りを得ることはできないと知り,あらゆる行をすべて放棄し尽くした果てに,おのずと得られるものなのだから,法然と親鸞とで異なることはあり得ない。
① 悪行を犯す人のことを悪人というのではない。煩悩を捨て去ることができない人のことを指す。
② そうだとすると称名念仏に専念するだけよいという法然の思想に背くものであるから間違い。
④ あらゆる行といっても少なくとも念仏は必要だとされたので間違い。
次のア〜ウは,法然と同様,当時の仏教に新たな展開をもたらした人物たちの思想の説明である。その正誤の組合せとして正しいものを,下の①〜⑧のうちから一つ選べ。(2015)
ア 親鸞は,阿弥陀仏の誓願を深く信じて念仏を称えよと説いた。彼の弟子の伝えによれば,これを実践できず,力で悟ろうとする悪人こそ,救われるべき対象である。この教えは,悪人正機と呼ばれる。
イ 道元は,ただひたすら坐禅するべきことを説いた。彼によれば,身心を尽くして静かに坐りぬく修行こそが悟りという目的に達するための,最善の手段である。この教えは,修証一等と呼ばれる。
ウ 日蓮は,「南無妙法蓮華経」という七字の題目を唱えよと説いた。彼によれば,『法華経』こそが釈迦による究極の教えであり,唱題は,その功徳のすべてにあずかることを可能にする行である。
- ① ア 正 イ 正 ウ 正
- ② ア 正 イ 正 ウ 誤
- ③ ア 正 イ 誤 ウ 正
- ④ ア 正 イ 誤 ウ 誤
- ⑤ ア 誤 イ 正 ウ 正
- ⑥ ア 誤 イ 正 ウ 誤
- ⑦ ア 誤 イ 誤 ウ 正
- ⑧ ア 誤 イ 誤 ウ 誤
ア 悪人とは「力で悟ろうとする」人ではなく、煩悩を捨て去ることができない人のことである。
イ 「静かに坐りぬく修行こそが悟りへの最善の手段」の部分が間違い。座禅は、悟りへの「手段」ではなく、悟りに等しい(修証一等)とした。
次のア〜ウは,文芸や芸術の分野で,美について思索した人物について説明したものである。その正誤の組合せとして正しいものを,下の①〜⑧のうちから一つ選べ。(2014)
ア 吉田兼好は,『徒然草』を著し,今にも花が咲きそうな梢や,花が散った後の庭に,見所があると述べ,世の中は無常であるがゆえに,「あはれ」があるのだと主張した。
イ 世阿弥が大成した能楽は,「幽玄」を理念としていた。世阿弥は,『風姿花伝』(『花伝書』)を著し,演技者が目指すべき有り様を「花」に譬えながら,演技者としての心得を説いた。
ウ 千利休が大成した茶道では,「わび」の精神が重んじられた。「わび」とは,華麗なものにも簡素なものにも,ひとしく無常と美を見いだし,そこに安らぎを覚えようとする精神のことである。
- ① ア 正 イ 正 ウ 正
- ② ア 正 イ 正 ウ 誤
- ③ ア 正 イ 誤 ウ 正
- ④ ア 正 イ 誤 ウ 誤
- ⑤ ア 誤 イ 正 ウ 正
- ⑥ ア 誤 イ 正 ウ 誤
- ⑦ ア 誤 イ 誤 ウ 正
- ⑧ ア 誤 イ 誤 ウ 誤
ウ 華麗なものではなく、世の無常を感じさせるようなものに情趣をかんじることが「わび」の精神である。
二宮尊徳の思想の説明として最も適当なものを,次の①〜④のうちから一つ選べ。(2014)
- ① 動物は,春には草を秋には木の実を食物とするほかはないが,人間は,一年中米を食べることができる。これは,人間の努力の結果であるので,人間は,天地の恩ではなく,他者の恩を自覚すべきである。
- ② 動物は,目の前にある食物を満足するまで食べてしまうが,人間は,今年のものを来年に残すことができる。これが人間の特徴であり,人間は,将来にそなえて貯蓄し,その蓄えによって他者に貢献すべきである。
- ③ 植物は,天地自然の働きによって成長するが,農業を営む人間にとって,雑草の成長は都合が悪いものである。しかし,人間は,天地の恩を思い,雑草を含めたすべての生命を慈しみ尊重すべきである。
- ④ 植物は,天地自然の働きによって,葉を茂らせ根を広げるが,これは,自らの欲望を自由にあらわした姿である。だから人間は,植物を見習い,常に自らの願望を満たすように生きるべきである。
読解問題
次の文章は,哲学者の久松真一が,茶道における一期一会の思想について述べたものである。その内容の説明として最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。(2020)
茶事を催す場合,これが一生涯に一度の会であると観念していれば,万事に隙なく心を配り,そこに自己の最善を尽くすこととなる。またこの次にやればよいなどというような心掛けでは,本当に身の入った茶事にはならない。これが済めば同じ会は一生にもう二度とはないとの覚悟をもって茶事を催す,それが一期一会である。……「人生は無常である」とはよくいわれることであるが,はまことに,私が今呼くこの息の次に,吸う息が果たしてできるかどうかは何人も断言しえないのである。……無常を,絶望としてただ悲観的にうけとれば,生きることを,消極的なものにしてしまうことになるが,もしわれわれが,人生は無常であるからこそ,この瞬間をフルに生きて,充実した生活をしようと覚悟すれば,無常はかえって,積極的な生命肯定の契機となるのである。
(『茶道の哲学』より)
- ① 一期一会とは,その都度の茶事を,次の会をよりよく催すために生かそうと覚悟することである。また,人生においても,その都度の瞬間を未来の目的のために生かす努力をすれば,充実した生を実現できる。
- ② 一期一会とは,その都度の茶事を,次の会をよりよく催すために生かそうと覚悟することである。しかし,人生は無常であるから,その都度の瞬間を一生に一度と覚悟し,全力で生きることで,充実した生を実現できる。
- ③ 一期一会とは,その都度の茶事を一生に一度限りのものと覚悟し,自己の最善を尽くすことである。また,人生においても,その都度の瞬間を一生に一度と覚悟し,全力で生きることで,充実した生を実現できる。
- ④ 一期一会とは,その都度の茶事を一生に一度限りのものと覚悟し,自己の最善を尽くすことである。しかし,人生は無常であるから,その都度の瞬間を未来の目的のために生かす努力をすれば,充実した生を実現できる。
次の文章は,荻生徂徠が朱子学の経書解釈について言及した一節である。ここに説かれた内容の説明として最も適当なものを,下の①〜④のうちから一つ選べ。(2017)
経学のための害は,古言を失ひ候故,経書の文面違ひ申し候。理気天理人欲等の付添これ有り候故,聖人の道に一層の皮膜を隔て候。惣体宋儒の学は,古聖人の書を文面のままに解したる物にてはこれ無く候。程子朱子何れも聡明特達の人にて,古聖人の書をはなれて別に自分の見識これ有り,その見識にて経書を捌き申されたる物に候⋯⋯(朱子学の経書解釈に凝り固まった)人は,是非邪正の差別つよく成り行き,物毎にすみよりすみまで,はきと致したる事を好み,⋯風雅文才ののびやかなる事は嫌ひに成り行き,人柄悪しく成り申し候こと,世上ともに多く御座候。(『徂徠先生答問書』より)
- ① 朱子学では,古代の語義を尊重しつつ,意味の通じない部分を恣意的に解釈するため,経書の真意を見失う。こうした経書解釈は人格の涵養にも影響し,朱子学を学ぶと独善的な性格になる。
- ② 朱子学では,古代の語義よりも,自分の考えを重んじて解釈するため,経書の真意を見失う。こうした経書解釈は人格の涵養にも影響し,朱子学を学ぶと細かな道理にこだわり偏狭な人間になる。
- ③ 朱子学では,経書の真意と自分の考えとを比較しながら妥当な解釈を選択する。こうした態度を突きつめていくと,ささいな語義にこだわり,物事を画一的に捉える性向を助長することになる。
- ④ 朱子学では,自分の考えを付け加えて経書の真意を捉えようとする。こうした態度を突きつめていくと,是非善悪の区別を無視し,自分勝手に振る舞う性向を助長することになる。
① 問題文には「古聖人の書をはなれて別に自分の見識これ有り」とあるので、古代の語義を尊重しているわけではない
③には「経書の真意と自分の考えとを比較しながら妥当な解釈を選択」とあり、①と同じ理由で間違い
④ 「是非邪正の差別つよく成り行き」とあるので「是非善悪の区別を無視し」は間違い
次の文章は,儒学者の室鳩巣が人倫を重視する立場から,仏教を批判したものである。この文章に表れた彼の考えとして最も適当なものを,下の①〜④のうちから一つ選べ。(2016)
但君を捨て親を捨てて仏に帰して,我が身一つを助けむと思ふは,世をば捨つれども,其の心は,君に代へ父に代へても,身をば捨てぬにてありけり。身を捨てずしては,世を捨つとも言ふべからず。世にありて名利を願ふも,世を捨てて極楽を願ふも,清濁は変はれど,身の楽を思ふは同じかるべし。⋯とても捨つるとならば,第一に身の楽を思ふ心をも捨てて,扨名利に離れて見よかし。世を逃るるにも及ばず,名教中に自然の楽地あるべし。⋯人倫を捨て事物を離れて,ただ己が往生極楽を願ふは,世を捨つると言へど,いまだ身を捨て得ぬより起りて,楽欲甚だしとも言ふべし。
(『駿台雑話』より)
- ① 極楽への往生を願うのは,主君や親を捨ててでも自分が救われようとすることである。むしろ,そのように自分の楽を思う心をまず先に捨てれば,聖人の教えに適った安楽の境地が開けるのである。
- ② 極楽への往生を願うのは,主君や親を捨ててでも自分が救われようとすることである。むしろ,そのように自分の楽を思う心をまず先に捨てて,主君や親の往生を願うならば,自分の往生も叶うのである。
- ③ 親や主君を捨てて極楽への往生を願ったとしても,一人きりでは楽は小さい。自分の楽を求めるのであれば,主君や親とともに楽を分かち合える聖人の教えに従った方が,より大きな楽が得られるのである。
- ④ 親や主君を捨てて極楽への往生を願ったとしても,親や主君を捨てた罪が消えるわけではない。聖人の教えに従い自分の楽を思う心を捨てて,その罪を贖うならば極楽に往生するよりも大きな楽が得られるのである。
本居宣長が死の受け止め方について述べた次の文章を読み,その内容の説明として最も適当なものを,下の①〜④のうちから一つ選べ。(2012)
神道の安心は,人は死に候へば善人も悪人もおしなべて,みな黄泉国へゆくことに候。善人とてよき所へ生まれ候ことはなく候。これ古書の趣にて明らかに候なり。⋯さて,その黄泉国は,きたなくあしき所に候へども,死ぬれば必ず行かねばならぬことに候故に,この世に死するほど悲しきことは候はぬ也。しかるに,儒や仏は,さばかり至りて悲しきことを,悲しむまじきことのやうに,色々と理屈を申すは,真実の道にあらざること,明らけく候なり。
(本居宣長『鈴屋答問録』より)
- ① 死は人間にとって如何ともし難い不可避の出来事であり,死後は黄泉国へと赴くほかはないのだから,いざという時にうろたえることのないように日ごろから心の修養に努めることのうちにこそ安心はあり,いたずらに死を悲しむべきではない。
- ② 死は人間にとって如何ともし難い不可避の出来事であり,死後は黄泉国へと赴くほかはないが,黄泉国での禍福はこの世の生き方によって決まるのだから,死を悲しまず,この世で善行に努め,死後の安楽を目指すことのうちにこそ安心はある。
- ③ 死は人間にとって如何ともし難い不可避の出来事であり,死後は黄泉国へと赴くほかはないが,この世の生き方にこそ意味があるのだから,死を悲しむことなくこの世でできる限り安楽に生きることのうちにこそ安心はある。
- ④ 死は人間にとって如何ともし難い不可避の出来事であり,死後は黄泉国へと赴くほかはないのだから,そのように心得ることのうちにこそ安心はあり,根拠のない恣意的な説によっていたずらに死の悲しみを克服しようとすべきではない。
次の文章は,福沢諭吉が,西洋由来の学問を支える懐疑の精神について述べた一節である。ここに説かれた内容の説明として最も適当なものを,下の①〜④のうちから一つ選べ。(2015)
信の世界に偽詐多く,疑いの世界に真理多し。⋯文明の進歩は,天地の間にある働きの趣を詮索して真実を発明するにあり,西洋諸国の人民が今日の文明に達したるその源を尋塗れば,疑いの一点より出でざるものなし。⋯東西の人民,風俗を別にし情意を殊にし,数千百年の久しき,おのおのその国土に行われたる習慣は,とみにこれを移すべからず。⋯西洋の文明もとより慕うべし。これを慕いこれに倣わんとして日もまた足らずといえども,軽々これを信ずるは信ぜざるの優に若かず。⋯よく東西の事物を比較し,信ずべきを信じ,疑うべきを疑い,信疑取捨そのよろしきを得んとするはまた難きにあらずや。⋯学者勉めざるべからざるなり。
(『学問のす>め』より)
- ① 西洋文明は既存の知識を疑い,真実を探ろうとする精神によって,進歩してきた。日本人もこれに倣うべきだが,軽々しく旧来の習慣を捨てて西洋文明を摂取しようとする態度は,否定されなければならない。
- ② 物事を信じるところには偽りが多く,むしろそれを疑うところに真実が見いだされる。日本人は西洋的な懐疑の精神に倣うべきであり,長い歴史のなかで根づいてきた習慣も,これを速やかに改めなければならない。
- ③ 西洋文明は,既存の知識を疑い,真実を探ろうとする精神によって,進歩してきた。しかし,最終的には,信じるべきものを信じることが求められる以上,懐疑の精神それ自体も疑われなくてはならない。
- ④ 物事を信じるところには偽りが多く,むしろそれを疑うところに真実が見いだされる。ただし,東西の文化はそれぞれ固有なものであり,長い歴史のなかで根づいてきた自国の習慣に限っては、これを疑ってはならない。
啓蒙思想家の一人である西周による次の文章を読み,朱子学の「理」に対する彼の批判について説明した文章として最も適当なものを,下の①〜④のうちから一つ選べ。(2013)
朱子学は,同じ道理,道理と一様に口ではいうが,その実は理に二通りあって,その理が互いに少しも関渉していないということを知らねばならない。今この区別を示すためにその一つを心理といい,その一つを物理と名づける。その物理は天地自然の理である。⋯しかし,心理というのはこのように広いものではなくて,ただ人間上ばかりに行われる理で,人間でなくてはこの理を会することができない。⋯その理(物理)は確定して万物ともにこれに外れることはならず,⋯彗星が出るというようなことも,⋯それだけの原因があらかじめそなわっていてできることである。⋯坊主一匹の祈念で天地の和を害することができるであろうか。ここが物理はまったく別なもので,いかに心力を尽くしても物理には増減のないという証拠である。
(『百一新論』より)
- ① 道理のうちには二つの理がある。一つは,あらゆる事象を貫く物理であり,一つは,人間にのみ当てはまる心理である。両者は異なる原理に立つものであるにもかかわらず,朱子学はそれを混同している。
- ② 道理のうちには二つの理がある。一つは,人間以外のものを貫く物理であり,一つは,人間だけが知ることのできる心理である。心理は物理の支配下にあるが,朱子学はその関係を捉え損ねている。
- ③ 道理のうちには二つの理がある。一つは,あらゆる事象を貫く物理であり,一つは,人間にのみ当てはまる心理である。両者は連続したものであるにもかかわらず,朱子学はその連続性を見落としている。
- ④ 道理のうちには二つの理がある。一つは,人間以外のものを貫く物理であり,一つは,人間だけが知ることのできる心理である。物理は心理の支配下にあるにもかかわらず,朱子学はその関係を捉え損ねている。
「信の世界に偽詐多し」に関して,福沢諭吉がそのように述べた理由を説明した次の文中の空欄a・bに入る語句の組合せとして正しいものを,下の①〜④のうちから一つ選べ。(2012)
aの涵養とbの導入による文明化こそが近代日本の歩むべき道であるとみた彼は,神仏などへの「信」によって形成される依存的な体質が,真理を見失わせ,文明の進歩を妨げると考えたから。
- ① a 独立自尊 b 民本主義
- ② a 東洋道徳 b 実学思想
- ③ a 忠孝心 b 人権論
- ④ a 独立心 b 数理学
独立心と、独立自尊の精神は同義である。「神仏などへの「信」によって形成される」思想を排すことが必要としたので、東洋思想や忠孝心は間違い。
次の文章は中江兆民が,唯物論に基づいて死の受け止め方を述べたものの一部である。その内容の説明として正しいものを,下の①〜④のうちから一つ選べ。(2012)
精神は不滅のものでない,精神の本体源頭たる軀体こそ,若干元素の抱合になれるもので,たとい解離しても不滅である。⋯故に人一旦死すれば従前あった所の五尺の軀は解離して,散りぢりばらばらになって,各元素皆不滅である。故に人宣死すれば天道の望むべきもなく,地獄の畏るべきもなく,かつまた二度再び人体を受けてこの世に生まれ出るはずはない⋯⋯。世界は無始無終である,⋯また無辺無極である⋯⋯。しかしてその本質は若干数の元素であって,この元素は永久游離し,抱合し,解散し,また游離し,抱合し,解散し,かくの如くして一毫も減ずるなく増すなく,即ち不生不滅である。草木人獣皆これ物の抱合に生じ,解散に死するのである。
(中江兆民『続一年有半』より)
- ① 生命体に特有の精神作用とその停止としての死という現象が見られるのは,構成する諸元素の離合集散の仕方が異なるためである。霊魂の不滅を想定したり,死後の安心を期したりする理由はここにある。
- ② 生命体特有の現象に見える生死にしても,構成する諸元素の離合集散の回数が多いために生じるにすぎない。したがって,霊魂の不滅を想定したり,死後の安心を期したりする理由はない。
- ③ 生命体特有の現象に見える生死にしても,構成する諸元素の離合集散作用の一コマにすぎない。したがって,霊魂の不滅を想定したり,死後の安心を期したりする理由はない。
- ④ 生命体に特有の精神作用とその停止としての死という現象が見られるのは,無生物とは構成する諸元素の種類を異にするからである。霊魂の不滅を想定したり,死後の安心を期したりする理由はここにある。
次の文章は,自らも子を亡くした西田幾多郎が,同じく子を亡くした友人に宛てて書いたものである。その内容の説明として最も適当 なものを,下の①〜④のうちから一つ選べ。(2020追試験)
いかなる人も我が子の死というごときことに対しては,種々の迷いを起こさぬものはなかろう。あれをしたらばよかった,これをしたらよかったなど,思うて返らぬことながら徒らなる後悔の念に心を悩ますのである。しかし何事も運命と諦めるよりほかはない。運命は外から働くばかりでなく内からも働く。 我々の過失の背後には,不可思議の力が支配しているようである,後悔の念の 起こるのは自己の力を信じすぎるからである。我々はかかる場合において,深く己の無力なるを知り,己を棄てて絶大の力に帰依する時,後悔の念は転じて懺悔の念となり,心は重荷を卸したごとく,自ら救い,また死者に詫びることができる。(『思索と体験』より)
- ① 我が子を救えなかった後悔に,心を痛め続けていても仕方がない。むしろ,心の傷を癒やすために自ら様々な努力や工夫をし,自分に間違いはなかったと自信を取り戻すことが,かえって死者に対しての詫びとなる。
- ② 我が子を亡くしたというようなときに後悔し続けてしまうのは,自分の気の持ちようで運命も思いどおりに変えられることを知らないからである。己の力を信じれば,何事をも諦める必要はなくなる。
- ③ 死んだ我が子に対し己の無力を詫びるのは,親の自然な情念である。しかし,自分はあのときどうすべきだったのか徹底的に反省し,己をより高めて いこうとすることこそが,子に対する真の懺悔となる。
- ④ 我が子の死というような事態が起こったときに後悔の念にさいなまれるのは,自分の力を信じ過ぎていることの証である。そのような自信を捨て,大いなる力を信じることが,自己を救うことにもなる。
次の文章は,和辻哲郎が,「風土」として捉えた自然について述べたものである。その内容の説明として最も適当なものを,和辻哲郎の思想を踏まえて,下の①〜④のうちから一つ選べ。(2014)
このような自己了解(風土における自己了解)は,寒さ暑さを感ずる「主観」としての「我れ」を理解することではない。⋯⋯寒さを感ずる時には我々は体を引きしめる,着物を着る,火鉢のそばによる。否,それよりもさらに強い関心をもって子供に着物を着せ,老人を火のそばへ押しやる。あるいは着物や炭を買い得るために労働する。炭屋は山で炭をやき,織布工場は反物を製造する。すなわち寒さとの「かかわり」においては,我々は寒さをふせぐさまざまの手段に個人的・社会的に入り込んで行くのである。⋯同様なことは炎暑についても,あるいは暴風・洪水のごとき災害についても言えるであろう。我々はこれらのいわゆる「自然の暴威」とのかかわりにおいてまず迅速にそれを防ぐ共同の手段に入り込んで行く。風土における自己了解はまさしくかかる手段の発見としてあらわれるのであって,「主観」を理解することではない。
(『風土』より)
- ① 私たちは,寒さを感じるときには孤立感を,自然の暴威に立ち向かうときには他者との一体感を感じる。私たちは,風土において,自らの身を犠牲にして間柄的存在として振舞うことを学ぶのである。
- ② 私たちは,寒さ暑さや暴風・洪水をもたらす自然に対して,対抗する手段をもっていない。私たちは,他者とともに風土と関わることを通じて,我々が,忍従的かつ受容的な存在であることを了解するのである。
- ③ 私たちは,寒さ暑さや暴風・洪水をもたらす自然に対して,主観的な立場から対抗策を考えることはできない。私たちは,他者とともに風土と関わることを通じて,自然を客観的に捉えることを学ぶのである。
- ④ 私たちは,寒さを感じるときに,個人的に対策を講じるだけではなく,他者と一緒に寒さを防いでいく。私たちは,風土において,自らが,個人であるとともに共同して生きる存在であることを了解するのである。
① 寒さを感じるときにも、他社への気遣い・援助などから一体感を感じると書かれている。
② 本文中に手段がいっぱい述べられている
③ 内容が本文とずれている。自己理解の方法を述べているのであって、「自然を客観的にとらえることを学ぶ」とは書かれていない。
人物まとめ
倫理の日本思想に出てくるすべての人物と主な思想・業績・著書をまとめました。
日本の仏教思想
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西田幾多郎主著は『善の研究』や『哲学論文集』人間の経験について主客未分や統一的或者を提唱。思想が円熟すると絶対無や絶対矛盾的自己同一の語も現れる。
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聖徳太子『三経義疏』・さんきょうのぎしょ・・・法華経、維摩経、ショウマン経の注釈書三宝を敬え 「世間虚仮、唯仏是真」・・・身分も含め 仏からすればだれもが煩悩にとらわれた凡夫
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行基朝廷の認可がない僧である私度僧
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鑑真律宗
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最澄『山家学生式』一切衆生悉有仏性・・・全員仏になる可能性あり
法華一乗・・・すべての者は仏にみちびかれるとの法華経の教え天台宗 延暦寺 具足戒を否定し、大乗菩薩戒をすすめる -
空海『三教指帰』・さんごうしいき大日如来は真理そのものですべての元
三密の行で即身成仏できる→現生利益あり真言宗 金剛峯寺 曼荼羅をもたらす 綜芸種智院をひらく -
空也踊念仏の創始者 阿弥陀聖、市聖の異名 巷の死体を火葬
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源信『往生要集』観想念仏
厭離穢土・欣求浄土・・・煩悩で穢れた世を離れ、浄土へ往生することをもとめよ -
法然
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親鸞自然法爾・・・ 絶対他力
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栄西『興禅護国論』・こうぜんごこくろん末法の世でも仏の知に至ることができる臨済宗
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道元只管打坐 修証一等・・・坐禅と悟りは本質的には同じ
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日蓮
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一遍信心に関係なく、念仏を唱えればどんな人でも救われる「捨聖」や「遊行上人」と称された。
日本の儒学
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藤原惺窩(せいか)天人合一思想・・・朱子学における理が、人の心の中にも備わっていて、天と人はそもそもは同一である
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林羅山『春鑑抄』上下定分の理・・・天理はそもそも上下の秩序を含み、そが身分制度などに現れている 存心持敬藤原惺窩の弟子
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山崎闇斎垂加神道を提唱 朱子学ただ一つのみが真理
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貝原益軒『養生訓』、『大和本草』本草学
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新井白石『西洋紀聞』・・・世界情勢・文化について
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雨森芳州朝鮮外交の理想的な姿についてあめのもりほうしゅう
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中江藤樹老荘思想でいう道のような、孝を道徳の根本とした。人間でいうと愛敬
道徳の行われるべき条件として時・処・位を提唱日本陽明学の祖とうたわれる 知行合一もゆうてる -
熊沢蕃山
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山鹿素行(やまがそこう)朱子学の理は曖昧で非現実的 武士道を批判し士道を提唱源流思想は『論語』から学ぶ
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伊藤仁斎(じんさい)『童子問』論語・孟子の本来の意味が大事 仁愛と誠を見出す古義学に分類される。
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荻生徂徠(おぎゅうそらい)道は経世済民の手段 礼楽刑政なども道 道の記述がある文献は元の言語で読め!古文辞学を提唱
国学や諸思想
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賀茂真淵『万葉考』『国意考』日本古来の精神として、高く直き心とますらをぶりなどを提唱。
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本居宣長『源氏物語玉の小櫛』『古事記伝』たをやめぶり もののあはれ重視→漢心の批判 惟神の道 真心
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平田篤胤(あつたね)古道と神道を融合させた復古神道を提唱
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石田梅岩商人の利益追求を肯定
正直・・・正当な方法での金儲けがいい
倹約・・・天下の財産を無駄にしないように不当な利益追求に関しては批判している -
安藤昌益自然世⇔法世(武士の社会)
万人直耕・・・みんなが田を耕し自給自足する自然性のあり方武士を「不耕貪食の徒」というた -
二宮尊徳「天道」と「人道」両方あって生活・社会が成り立つ
分度・・・自分の経済力の範囲で計画的にやりくり
推譲・・・余剰を将来のために蓄えたり譲ったり 報徳思想
鎖国と開国
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佐久間象山西洋は芸術・技術 登用は道徳和魂洋才の考え方
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横井小楠古代中国の道徳・政治と西洋の技術が大事和魂洋才の考え方
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吉田松陰一君万民論
純粋な心持ちである「誠」を重視
外国と対等な関係に立つための攘夷論 -
会沢正志斎尊王攘夷論
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福沢諭吉日本には実学と独立心が足りない・・・独立自尊の精神とも言い、自分自身で判断すること 天賦人権論 脱亜論
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津田真道死刑制度に反対
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西周帰納 客観 哲学 など「哲学」を作った
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中村正直(まさなお)『西国立志編』功利主義や自由主義を紹介J.S.ミルの『自由論』を訳したことで有名
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加藤弘之立憲政治の制度を紹介 天賦人権論から社会進化論へ
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森有礼一夫一妻制を強く主張。一橋大学の創始者としても有名
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中江兆民『民約訳解』回復的民権と恩賜的民権『社会契約論』などを訳し、「東洋のルソー」の二つ名がある。
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植木枝盛抵抗権を主張
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内村鑑三
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新島襄現在の同志社大学の創始者とされる。
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上村正久
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新渡戸稲造『武士道』
国家、社会主義
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陸羯南(くがかつなん)国民主義・・・日本の長所も生かしつつ、西洋文化もゆるやかに導入するべき 国粋主義
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三宅雪嶺・志賀重昂(しげたか)国粋主義・・・日本の伝統の長所を軽視してはならない
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徳富蘇峰『国民之友』平民主義・・・欧化はまず平民から行われるべき
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幸徳秋水社会主義 非戦論ほかにも 平民主義、平和主義を唱えている
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片山潜(せん)キリスト教的人道主義 社会主義
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阿部磯雄(いそお)キリスト教的人道主義 社会主義
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北一輝超国家主義
日本思想
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西田幾多郎主著は『全然禅善の研究』や『哲学論文集』善・・・目的・意思・努力が結びついたときおこる 人間の経験について主客未分や統一的或者を提唱。思想が円熟すると絶対無や絶対矛盾的自己同一の語も現れる。
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和辻哲郎間柄的存在・・・人間は互いの関係の中で生きている
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鈴木大拙(だいせつ)
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柳田国男常民 民俗学
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折口信夫古来の神は「まれびと」 芸能は神の祭祀により発展した自分や柳田国男の説を新国学と称した
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柳宗悦(むねよし)民芸 民芸運動
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南方熊楠神社合祀例に反対反芻ができた 百科事典を丸々覚えて書き写した
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美濃部達吉天皇機関説・・・天皇はあくまでも統治権を使う機関でしかないという説
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